パリの南東およそ150km──恵み豊かな野山に囲まれたブルゴーニュ地方。“黄金の丘”コート・ドールをはじめ、緩やかな起伏を描く丘陵地帯が連なるここは、ボルドー地方と双璧を成す世界に名だたるワインの銘醸地だ。かつてブルゴーニュ公国の中心都市として栄えたディジョンは、歴代の王たちが集めた美術品や、中世建築の遺産が数多い古き良き芸術の都。また一方では、伝統的フランス料理のルーツの一つとされ、“美食の郷”の愛称でも知られている。
たとえば、日本人にもおなじみの牛肉の赤ワイン煮「ブフ・ブルギニヨン」や、鶏肉の赤ワイン煮「コック・オー・ヴァン」は、いずれもこの地を代表する郷土料理。贅沢にもワインをたっぷりと使った、芳醇で濃厚な味わいが特徴だ。
市内中心部では週に4日、マルシェ(朝市)が開かれ、多くの客で賑わいを見せる。色彩豊かな野菜や旬の果物、新鮮なチーズや肉、蜂蜜……と、普段デパートやスーパーでは買うことのできない地元食材が豊富に並ぶ。「ここはブルゴーニュ人の胃袋そのもの」と笑う店主の言葉に思わず納得。あれこれメニューを考えながら食材を吟味し、買い物を楽しむ人々。そして足は自然と「パン・デピス」を扱う店へと向かっていく。
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