インドシナ半島中央部に位置するタイ王国。バンコクから北へ700㎞、北部最大の都市チェンマイは「北方のバラ」と呼ばれる美しい古都だ。市内には100を超える寺院が点在し、絹織物や漆器をはじめ伝統的な手工芸品の生産が盛ん。その郷愁漂う懐かしい趣と、ゆるやかな時間の流れに身を任せれば、タイ人の“マイペンライ(気にしない)精神”も、すんなり理解することができよう。
実に大らか。ゆとりを何より大切にする暮らしぶりは、日常の至るところでうかがえる。たとえば食事の時間。一日3食を基本とする日本とは違い、お腹が空いたら食事をとるスタイルで、老若男女、5食+αは当たり前のこと。ちなみに知人に会ったときの第一声は「やあ、ご飯食べた?」──。こんな挨拶から始まるくらい、食に対する関心も高い。それだけこの地には、人々を飽きさせない魅力的な料理が揃っているのだ。
トムヤムクンやグリーンカレーといった伝統的なタイ料理をはじめ、香辛料やハーブを多様に組み合わせた味わいは、一度食べたらやみつきになるおいしさ。また、近隣諸国由来の料理が数多く見られるのも特徴。しかし〝甘・辛・酸〟の味つけを施し、タイ料理の型にぴたりと納められているせいか、外国からやってきた食べ物という気がしない。タイ風にら餃子「カノム クイチャイ」も、そんな料理の中の一品なのである。
|