真っ青な空、悠々と続く緑の畑。エーゲ海地方は、変化に富んだトルコの中でも大地の豊かさを肌で感じる地域。北約20㎞に世界遺産の古代遺跡・ヒエラポリス-パムッカレを抱えるデニズリも、伝説の都市を支えた遥か昔からの恩恵にあずかる町である。市場や食卓を彩る瑞々しい野菜や果実、豊富な食材は住民の自慢の一つであり、「外に食べに行くことはほとんどない。家に十分おいしい食事があるから」と胸を張る。 もともとトルコの主婦に、料理上手が多いのはよく知られた話。野菜をふんだんに使ったトルコ風の前菜「メゼ」からスープ、肉や魚、デザートまで、驚くほどたくさんのレパートリーを持っている。
その中で、国民食と言えるほど愛されているのが「エティリ・クル・ファスリエ」。ラム肉と豆のトマト煮込みだが、デニズリの主婦は土地が産する野菜をたっぷり加える。じっくり煮込んで柔らかくなった肉の旨味と、豆や野菜の滋味がしみじみおいしい。ケバブのような専門店の味から豪華な宮廷料理まで美味珍味が揃うこの国には、一方でこんな素朴な家庭料理もある。世界三大料理の一つに数えられるトルコ料理の、懐の深さを物語る一皿である。
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