世界各地のバラエティ豊かな朝食
また、幸せの香り漂うパン料理などを紹介していきます。

「ジャークチキン」&「フェスティバル」。現地ではケチャップをつけて食べる人が多い。鶏肉を漬けるシーズニングの配合は店によって違うが、別名ジャマイカペッパーと呼ばれる原産のオールスパイスは不可欠。

月刊dancyu[ダンチュウ]
2018年 10月号
編集タイアップ企画より

ジャマイカ

国民的ジャークチキン!
祭りという名のパン

 不思議な高揚感に包まれた島である。カリブ海の楽園・ジャマイカ。その空気感の源は、照りつける常夏の太陽とまばゆいばかりの海、常にどこかで流れるこの国発祥のレゲエミュージック、そして何より島民だろう。歌と踊りをこよなく愛し、陽気で感情表現豊かに生きる人々。今を楽しむエネルギーが、彼らの体から発散している。

 そんなジャマイカの国民的な肉料理が、「ジャークチキン」。何種類もの香辛料を合わせたシーズニングに鶏肉を漬け込み、炭火で焼く。現地の屋台では、ドラム缶グリルで燻しながら焼く豪快なスタイルもおなじみだ。ルーツは過酷な労働から山へ逃れたアフリカ系の人々の料理とも、カリブの海賊の保存食とも言われるが、味わいは繊細で奥深い。辛味と旨味に独特の清涼感がからみ合う巧みなスパイス使い、肉をしっとり、ジューシーに仕上げる技──すべてが、この味に凝縮している。

 夕暮れのストリートなど、人が集まる場所には屋台が必ず登場。注文するとアルミホイルに包み、一枚の食パンを添えて供されることが多い。見かけはラフだが、これが絶品。パンとの相性が抜群なのだ。

 さらにもう一つ、「フェスティバル」と呼ばれるトウモロコシ粉入りの揚げパンも、ジャークチキンのつけ合わせになる。直訳すれば“祭り”。昔から愛されてきたパンで、ずっしりとして腹持ちがいいだけでなく、ほのかな甘味がスパイシーな料理を引き立てる。素朴な形に詰まったおいしさからは、どんな時代も精一杯、食を楽しんできた島の暮らしが垣間見られるようだ。

 それにしても、フェスティバルとは何とこの国にふさわしい名前のパンだろう。朝から街は活気にあふれ、大音量で曲を流す人あれば、夜から続いたダンスパーティー帰りの人もいる。そして誰もが食べる、食べる。パンはもちろん、ゆでバナナやヤムイモ、果実……。終わらない夏を生きる術は、こんな朝食にもあると思えた。