冷たい雪が降り出すサハリンの10月。これから半年以上続く長い冬の幕開けだ。野菜やきのこの漬物、木の実のジャムはすでに家庭ごとにたっぷり用意され、キッチンや納屋の一角に納められている。 各家の玄関に置かれた大きなトレーも冬支度を告げるもので、中身は「ペリメニ」。シベリア風水餃子と言われるロシアの国民食だ。豚や仔羊、牛などの肉を小麦粉の皮で包むのが一般的だが、魚介類が豊富なサハリンでは魚、特に鮭をよく使う。一度に山ほどつくり、氷点下20℃にもなる二重式の外玄関で凍らせ、冷凍庫で保存。食べるときは塩とハーブを加えたスープでさっと煮る。シンプルでいて味わい深く、熱々。凍てつく冬の日の、何よりのご馳走である。
別名〝パンの耳〟と呼ばれる愛らしい形。不揃いなのもご愛嬌、小さな子供も包むのを手伝った証拠だ。家族総出で保存食を用意するのがこの土地の流儀。みんなで出かけたきのこ狩り、お喋りしながらの賑やかな仕込み……。ペリメニや漬物の一つ一つには、そんな家族の時間も詰まっている。
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