カスピ海の畔。北海道ほどの小国に、抱え切れないくらいの風土や歴史が詰まっている。砂漠、平原、山脈、渓谷、海岸線と、次々に移り変わる風景。中央ユーラシアという立地から、古今東西の民族・文化が行き交った国だ。料理もそれを物語っていて特にトルコやイラン、ロシアなどと似たものも多数あるが、変化に富んだ大地がもたらす多彩な食材がこの国でしかない味を生んでいる。ワイン発祥の地とされる土地。隠れたワイン名産国でもある。 古くから受け継がれる調理法が、今なお家庭料理の中心なのも特徴だ。長時間かけた煮込み料理も多く、なかでも定番が「ピティ」。羊肉を豆や栗、ドライフルーツと一緒に半日煮込む、全土で愛される料理である。食べ方がユニークで、まずちぎったパンに煮汁を注いで食べ、次に具をフォークで潰して味わう。一皿で二度おいしい。パンにしみた濃厚スープとほろほろ崩れる肉で、口の中は滋味であふれんばかり! 合わせるパンはこれも昔ながらの円盤形パン「チョレティ」。ナンと同様、タンドールで焼くが、食べると中がもっちりとしたおいしい発酵パンである。
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