シルクロードの味とでも呼ぼうか。中国から地中海世界に至るまで、ユーラシア大陸を横切る遥かな道のりの行く先々で出合うのが〝肉の串焼き〟だ。ジクカワープ、シーシュカバーブ、シシュケバブ……。地域によって名前も味も変化していくのが、まるでルーツを辿るかのようで面白い。
そのシルクロードの中ほど。往時、交通の要衝として栄えた街が、ウズベキスタン第二の都市・サマルカンド。ここの串焼きは「シャシリク」。旧ソ連圏に共通する呼び名だが、やはりこの街ならではの味わいがある。羊、牛、鶏と肉ごとの個性は十分楽しめつつ、気になる臭みやクセがない。鼻から抜けるやわらかなスパイスの香りが後味をきれいに引き締める。シンプルだが、どこか洗練されているのだ。
しかも店でも家でも、どこで食べてもおいしい。「料理は体で覚える」と言う地元の人が調理法をレシピ化することは希だが、一般の主婦でもつくり方をわきまえている。
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