世界各地のバラエティ豊かな朝食
また、幸せの香り漂うパン料理などを紹介していきます。

シーフードカレーの「バニーチャウ」。現地ではマトン、ラム、チキンなど多彩なカレーで楽しまれている。カレーは日本のルウを思わせるもったり食感だが、スパイス使いは独特。付け合わせは野菜の酢漬けなどが多い。

月刊dancyu[ダンチュウ]
2018年 9月号
編集タイアップ企画より

南アフリカ共和国
ダーバン

世界最大級! 虹の国の
ザ・カレーパン

 迫力もスタイルも、規格外のカレーパンである。ゆうに一斤分はあろうかという食パンを丸ごと使い、クラムをくりぬいてできた空洞にカレーをたっぷり注いだ「バニーチャウ」。名前はインドのカーストで、商人を意味するバニアに由来するという。インドから遠く離れた南アフリカ東海岸、港町ダーバンの名物料理だ。

 歴史上、多くの移民を迎えてきた南アフリカ。民族と人種の多彩さを七色の虹にたとえ“レインボーネーション”とも称される。食にもそれは表れていて、各地からの移民がもたらした料理が現地の味と共存し、バラエティー豊かでユニークな文化を形成している。その中で、ダーバンは昔からインド系住民が多く暮らし、おいしいカレーが食べられると評判の街だ。

 とは言え、王道のインドカレーとは一線を画すバニーチャウ。1940年代、インド系労働者が食パンを器代わりに使ったのが起源とされる。まずくりぬいたクラムをカレーに浸して食べ、次に食パンの周りを崩しながら食べ進めていく。カレーの熱で温まったクラストの香ばしさが、スパイスの香りを膨らませる。「食パンはほんのり甘いのがいい」「カレーはあの店が旨い」など、地元民なら一家言ある料理。今や人種を問わず、地元の誇りとする味なのだ。

 食べ方はそれぞれで、インド系住民は手で、ヨーロッパ系はナイフ&フォークを使う人が多い。但し、押しつけ合いはしない。綺麗な虹を保つには、お互いの文化や流儀をリスペクトし合うこと。この国の人々は、誰よりそれを知っているのだろう。

 さて、美しい海岸線も有名なダーバンで早朝から賑わうのがビーチ周辺。泳ぐ人、サーファー、輪になって踊るグループ……。朝食スタイルもさまざまで、カフェで優雅にモーニングを楽しむ姿があれば、屋台でトースト片手に大声で談笑する人々もいる。気兼ねなんてない、自由でパワフル。そんなこの街を、みんなが愛しているからだ。