焼きたての「パンケーキ」にバターをのせ、上からメープルシロップをたっぷり。カナダ人も大好物の一皿だ。休日の朝やブランチに食べられることが多いという。写真は、ブルーベリーにメープルシロップ、レモン果汁を合わせたメープルブルーベリーソースを添えたもの。
月刊dancyu[ダンチュウ]
2020年 4月号
編集タイアップ企画より
カナダ
バターとパンに、
メープルシロップの魅惑!
香ばしく焼けたパンにとろけるバター。世界中の朝を元気にする至福の組み合わせだ。このおいしさに、さらに優雅な魔法をかけるのがメープルシロップ。甘く深い香りと味わい、サラサラとライトな食感で、日本のスイーツ界でも大人気。名産地はもちろんカナダ。東部のケベック州を中心に広がるサトウカエデの森が故郷だ。
秋には燃えるような紅葉で大地を彩る、その幹から甘い樹液(メープルウォーター)を採る方法は、原住民から開拓者へと伝えられたとか。甘い魅惑はカナダの歴史と文化の象徴。人々の生活にも深く浸透していて、「どの家庭にも当然あるもの。必需品よ」と主婦たちは口を揃える。
多民族国家がもたらした多彩なパン文化も特徴のカナダ。メープルシロップはどんなパンにも合うが、なかでもみんな大好きなのが「パンケーキ」との組み合わせ。甘味とともに微かに感じる森や樹々の香りが、小麦の風味と溶け合う。旬のベリーや果実をたっぷり添えたカナダ流パンケーキも、これがあってこその完成となる。
ちょうど3月から4月は、樹液の採取期。森に点在する食堂兼備のメープルシロップ工房は、森林浴やメープルシロップを使った料理を楽しみに訪れるたくさんの人々で賑わいを見せる。仲間同士や家族連れ、子供たちも大勢参加。その光景には、ひと足早く春の訪れを祝う思いも込められている。大自然の中で、自然とともに生きる喜び、大地が与えてくれる恵みの豊かさを心にしっかり刻みこむのだ。
さて、まだまだ冬の気候が続くカナダ。朝から雪交じりの荒天が続くことも珍しくない。少々憂鬱な気分を吹き飛ばしてくれるのも、黄金色のトースト&バターにメープルシロップ──。シンプルだけれどおいしい、いつもの朝食。季節を問わないプレートではあるが、この時期はどこか特別な味。ピュアな甘味に詰まった春への予感に、心も満たされるカナダの朝である。