北米では「本当のつくり方は?」など熱い議論もされる「キューバンサンドイッチ」だが、本国流は大らか。パンも型焼きパンから丸パンまであり、具もハム&チーズのみの場合もある。ただし野菜は入れないのが鉄則とか。
月刊dancyu[ダンチュウ]
2017年 3月号
編集タイアップ企画より
キューバ共和国
4年に一度の野球の祭典、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の常連国でもあるカリブ海に浮かぶ美しい島国、キューバ。近年、風情ある街並みやダンス、音楽など魅力が再発見されているが、「最高なのは人だよ」と住民たちは言う。陽気でフレンドリー。何より人々の間に助け合いながら生きる温かさが生きている。
そんなキューバに、海を越えておいしさが絶賛されるサンドイッチがある。今やフロリダ州でも地元の味として愛される「キューバンサンドイッチ」。北米には19〜20世紀、キューバ移民によってもたらされたとされる。キューバパンと呼ばれる軽い食感のパンにハム、チーズ、ローストポークを挟み、たいていはサンドイッチプレス器で表面をカリッと押し焼きしたこのサンド、アメリカでは〝本当のつくり方”をめぐって熱い議論もなされるほどの人気ぶりだ。
とはいえ、本場のキューバ人に言わせれば「ルールなんてないよ。一人一人好きな味でつくればいい。でも、素材は生かさなきゃね」。主役となる素材の味を覆い隠すトッピングはNG。肉の滋味、ハムの旨味、チーズの風味、そしてパンの香ばしさ。すべてが存分に生きてこそ〝キューバのサンドイッチ”。それはおいしいだけでなく、パワーが体に注ぎ込まれるような味わいだ。
大手チェーンの少ないキューバでは、スタンドなどで気軽に買える最も身近なファストフード。時に不恰好なのもご愛敬。つくり手から食べ手へ直接、笑顔とともに渡される味わいには何とも言えない温もりがあり、それは彼の地へ渡った移民たちにも忘れがたいものだったに違いない。
さて、キューバの朝の風物詩と言えば、通りを挟んでベランダ越しに会話する人々の楽しげな光景。その声は徐々に増え、やがてどの家からともなく音楽が聞こえ始め、パンの焼ける香りやコーヒーの匂いが街中に漂い出す。この国は大きな家──そんな思いにとらわれる瞬間だ。