HOME | 世界の朝食 | コラム アジア | ミャンマー連邦共和国 ヤンゴン

世界各地のバラエティ豊かな朝食
また、幸せの香り漂うパン料理などを紹介していきます。

朝の屋台や食堂で定番の「オンノ・カウスェー」。出勤時間前にほぼ売り切ってしまう朝限定のメニューなのだとか。中国、インド、東南アジアなどさまざまな食文化の影響が見られるが、不思議な懐かしさを感じる味わい。麺とシャキシャキの玉ねぎがからみ合う食感も絶妙!

月刊dancyu[ダンチュウ]
2020年 6月号
編集タイアップ企画より

ミャンマー連邦共和国
ヤンゴン

多彩な食文化が交わる
麺とパン

 麺はやや縮れた中華麺で、スープは魚醤を効かせたココナッツミルク味。具はインドや中東でも見かけるひよこ豆粉のフリッターとスパイシーなチキン、ゆで卵など。この一杯に、いくつもの食文化が融合している。麺にからむ玉ねぎやカリッとしたフリッターの食感も楽しい。食べ進むうちにそれらの滋味はスープに溶け出し、ポタージュにも似たとろりと優しい美味となる。

「オンノ・カウスェー」。訳せばココナッツミルク麺。ミャンマー最大の都市・ヤンゴンの朝の定番だ。街には早朝から屋台や食堂が開店し、客が絶えない。肌の色も顔立ちも多様な人々がまじり合い、同じ味を楽しむのもこの街らしい光景だ。

 文化も人種も宗教も違う135の民族が共存するミャンマー。主流のビルマ族から少数民族、インド人、華僑などまで暮らすヤンゴンはその縮図だ。街の暮らしを現地の人はこう話す。「みんなで助け合っているのよ。相手を問わず、人のためになりたいと思うのがミャンマー人だから」。

 食も多彩。隣接するタイ、ラオス、中国、インド、バングラデシュとの交流やイギリス統治の歴史も影響し、それらが混じり合う独特の文化を育んできた。パンならナンや中華の揚げパンのほか、食パンも一般的。

 食パンと言えば、面白い食べ方もある。ココナッツミルクに浸すのだ。食感の変化を味わうのが好きなミャンマー人。最もおいしい瞬間は、パンが徐々にココナッツミルクを吸ってあたかも一体となったとき。心底ほっとする甘味には、この国ならではの味わいを感じずにいられない。

 さて、そんなヤンゴンでも近代化は進行中。朝食のスタイルも少しずつ変化し、最近はバゲットなどが食卓に上ることもあるという。それでも変わらないものもある。一日の始まりに家や寺院で祈りを捧げる人々。自分だけでなく、生きとし生けるものの幸福を願って。靄(もや)に煙る亜熱帯の深い緑とともに、心にしみる朝の光景だ。