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世界各地のバラエティ豊かな朝食
また、幸せの香り漂うパン料理などを紹介していきます。

北インド風「エッグカレー」。南インド風とは違ってココナッツミルクは使用せず、家ごとの違いもあるが、クミン、チリ、コリアンダー、ガラムマサラなどスパイスの組み合わせが味わいの決め手。写真奥は、インドを代表する食事パンの「チャパティ」。

月刊dancyu[ダンチュウ]
2020年 8月号
編集タイアップ企画より

インド
北インド

カレー&スパイス、
パンがある豊かな食卓

 まるで、ありとあらゆるものが詰め込まれているようだ。首都・デリーを中心に広がる北インド。地形は平原から砂漠、山脈と移り変わり、場所によっては夏冬の激しい寒暖差など自然は多様性に富んでいる。そこに民族も言葉もさまざまな人々がひしめき合い、暮らす土地。

「だからこそ、食文化が発達したのよ」とは現地の主婦。地域や季節ごとの食材が多彩な上、食習慣の違いによるバリエーションも豊富。異文化を超えた料理のミックスも盛んで、素材を生かすスパイス術は進化し続けている。世界随一のカレー大国・インドの中でも、百花繚乱の味わいが楽しめるのが北インドという土地柄なのだ。

 最近、日本で人気の「エッグカレー」も豊かなイマジネーションすら感じさせる。トマトベースで、目立つ具はゆで卵。現地では“シンプルなカレー”だが、スパイスの組み合わせによって重層的な香り、風味が生まれ、卵の滋味を浮かび上がらせる。まさに魔法のような技が、日常に根づいているのがわかる一皿だ。

 そして、カレーに欠かせないのがパン。恵まれた穀倉地帯である北インドは、パンが主食。全粒粉を水で練って焼くチャパティをはじめとして、油で揚げたプーリーやおなじみのナン、詰め物をしたパンなど、こちらも多彩。子供たちは「今日はあのパンが食べたい」とママにおねだり。それに応えるように、主婦は毎日パンを焼く。華やかなスパイスの香りに小麦の香ばしい香りが混じり合うときが、家族が食卓に集う合図。それは幸せな“混沌”だ。

 さて、西洋パンもポピュラーなインド。特に北インドの都市では、食パンに旬の果物などが朝食の定番だとか。時には早朝の散歩帰りに、家族土産に買った屋台のサモサやサンドイッチが、ところ狭しと食卓に並ぶ。ちょっと多すぎない?と水を向けるとにっこり。「愛情に詰め込みすぎはないんだよ」と、その表情は語っていた。