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世界各地のバラエティ豊かな朝食
また、幸せの香り漂うパン料理などを紹介していきます。

北マケドニアの伝統的な朝食「ゼルニック」。小麦粉、卵、イースト、塩、砂糖、ぬるま湯、オイルでつくる生地でリーキとフェタチーズを包み焼いたパン。ヨーグルトとトマトを添えるのが家庭風。イーストを含まない紙のように薄い生地・フィロでつくるタイプもある。

月刊dancyu[ダンチュウ]
2019年 11月号
編集タイアップ企画より

北マケドニア共和国

朝も昼も夜も
ヨーグルトとパン!

 欧州最後の秘境と言われることもある。バルカン半島の中央、四方を5カ国に囲まれた小国、北マケドニア。独立国としての歴史は浅く、近隣の国々と比べてまだ訪問客も少ないが、古来、多様な文化が行き交った土地。森や湖が連なる美しい風景に、古い遺構が残る街や村……。その魅力を再発見する人が増えていると聞く。

 素朴で温かい人々や、ほっとするおいしさの家庭料理も魅力。隣国ギリシャやブルガリアなどとの共通項も見られるが、この国の美味の源は年間200日以上の晴天がもたらす恵みの農産物であり、それらを生かしたシンプルな料理が多い。

 そんな北マケドニアの食卓に欠かせないのが、ヨーグルトとパン。言うまでもなく世界中で親しまれる発酵食の代表だ。ヨーグルトは料理に使うほか、肉やパイにつけるなどフル回転。一方、主食のパンは食事パンから惣菜パンまで種類も豊富だ。

 その名コンビを楽しめるのが「ゼルニック」。薄くのばした生地でリーキとフェタチーズを包み、細長く成形。型に渦巻き状に詰めて焼くパンで、ヨーグルトを添えて食べる。リーキの甘味とチーズの塩気がからみ、そのままでも旨いパンがヨーグルトと出合うことでぐっとまろやかになる。

 伝統的な朝食とも紹介されるが、実は家庭のメニューは朝昼晩で大きく変わらない。それでも朝はヨーグルトドリンク、夜は地場産ワインを開けて、家族や友人と楽しむ食事にはそれぞれ違う豊かな味わいがある。「宝物は財産でなく、皆で囲む食卓だ」と話すこの国の人々。おいしさをもたらすのは何より、楽しもう!という心であることを彼らの食卓は教えてくれる。

 さて、北マケドニアの主婦に聞いた思い出を一つ。幼い頃の朝食の習慣は、食卓を覆った布を母が手品のクライマックスのように取り去ることだったとか。瞬間、目に飛び込むような食材の色合いとパンの香り。そのときの喜びは今も消えないと言う。