世界各地のバラエティ豊かな朝食
また、幸せの香り漂うパン料理などを紹介していきます。

オランダ語のビターズ(香草酒の一種)に由来する「ビターバレン」。カリッと揚がった衣の中はとろりとしていて、牛肉の旨味とハーブの香りが効いたビーフシチューという感覚に近い。パンと相性がよく、マスタードをたっぷりつけ、オープンサンドにして食べる人も多い。

月刊dancyu[ダンチュウ]
2019年 10月号
編集タイアップ企画より

オランダ王国

揚げ物とビール、そして
パンのある幸福な食卓

 江戸時代を通じ、欧米で唯一の交易国として日本に多くの西洋文化をもたらした国・オランダ。いくつもの外来語の母国でもあり、ビールもその一つとされている。

 そんなオランダ、もともとビール大国として名高いが、近年はクラフトビール熱が高まるいっぽう。九州より少し広い程度の国土に大小さまざまなブルワリーが400近く。街には多彩なビールを楽しめるパブが軒を連ね、国民の大多数を占めるビール党を満足させている。そしてこの国で、ビールの友と言えばズバリ揚げ物! こちらも種類が豊富で、肉や魚、チーズのフライから、ナシゴレンなどの東南アジア料理をコロッケ風に揚げた変わり種も人気がある。

 なかでも国民食と呼ばれるのが「ビターバレン」。数種のハーブとともにコトコト煮た牛肉をほぐし、ビーフブイヨンを加えたルウと合わせて成形、パン粉をつけて揚げたもの。日本的にはビーフシチューのコロッケといった印象で、一口サイズに牛肉の旨味と手をかけた美味が詰まっている。

 今の季節に目立つのは、これを肴にビールと夏の余韻を楽しもうとパブのテラスに陣取る人々。夕方なら家族連れの姿もちらほら。仕事は早く切り上げ、家族の時間を日々楽しむのがこの国のスタイルだ。

 外で食べる日は、子供もジュースや炭酸飲料をおねだり。寛いだ両親の脇で、ビターバレンを一緒につまむ子供たちのうれしそうなこと。食生活の基本は質素と言われるオランダ人。外食でもそれほど贅沢をするわけではないが、こんな食卓の光景にはやはり豊かさを感じずにいられない。

 さて、そんなオランダの朝食。普段はチーズやハム、チョコスプレッドなどを用意して、パンと食べることが多い。見方によっては簡素だが、それぞれの質にこだわり、シンプルなおいしさを追求するのがオランダ流。そして何よりも重んじられるのは、家族で食卓を囲むこと。この国には、まだまだ学ぶべき文化がある。