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世界各地のバラエティ豊かな朝食
また、幸せの香り漂うパン料理などを紹介していきます。

スウェーデンのサンドイッチケーキ「スモルゴストータ」。中身は成形したパンと具を交互にのせた、正真正銘のサンドイッチ。最近はベーカリーなどでも注文でき、一人用のミニサイズもある。飲み物はコーヒーもいいが、白ワインやスパークリングワインと合わせても美味。

月刊dancyu[ダンチュウ]
2018年 1月号
編集タイアップ企画より

スウェーデン王国

 こんな発想、どこから生まれたのだろう。サンドイッチをデコレーションケーキのように飾った「スモルゴストータ」。誕生日や記念日のパーティーを心浮き立つものにする、スウェーデンのもてなし料理だ。

 中身は数種の具が挟まれた3〜4層のサンドイッチ。サワークリームやチーズを混ぜて全体に塗り、サーモン、甘海老、ゆで卵、ディルなどを美しく飾る。「まず土台のサンドイッチをつくり、仕上げる前に一晩ねかせるのがコツ。パンがしっとりして具とよくなじむのよ」とは、ある主婦。一口食べるとパンと具、クリームが一体となり、まるで宝箱が解き放たれたようなおいしさが広がる。味わいも、また華やかだ。

 このスモルゴストータが、ひと際輝きを放つ時間が“フィーカ”だ。フィーカとは、コーヒーに甘いお菓子や軽食を添えて、気の置けない人たちとゆったり寛ぐスウェーデン流のライフスタイル。基本的にはカフェやオフィス、森や公園と、人が集えばどんな場所ででも自然に始まるものなのだが、大切な知人や友人を招き、家でもてなすフィーカは格別。特に室内で過ごす時間が長くなる季節、美しく飾りつけた部屋で家族や仲間と語り合い、一緒に過ごすフィーカは外の寒さも忘れさせてくれる。

 北欧の長い冬。日々の喜びは、家の中に詰まっている。親子でクリスマス飾りをつくったり、お菓子を焼いたり……。夏には緑であふれた街並みはすっかり冬景色。それでも、家々の窓に揺れるキャンドルの灯や街角のイルミネーションが生む幻想的な雰囲気は夏にない趣(おもむき)。この国の冬の美しさ、温かさは人々がつくるものなのだ。

 朝も暗い中で迎えるが、やはりこの季節ならではの楽しみがある。電灯はつけず、朝からキャンドルを灯すのだ。食卓には、パンにハム、チーズ、ジャム……。温かな灯に照らされた食事はどれもおいしく、家族の顔も優しく見える。太陽の代わりに朝を包む光がそこに満ちている。