トルコの国民的サンドイッチ「ドネルケバブ」。スライスした肉を積み重ね、垂直の串に刺して回転させながら炙り焼き。外側からこそげ落とす独特な肉の調理法は19世紀に生まれたとされる説が有力。パンはピタパンが主流だが、いくつかの種類から選べる店もある。
月刊dancyu[ダンチュウ]
2020年 12月号
編集タイアップ企画より
トルコ共和国
世界一!パン大国の
“ザ・ベスト”サンドイッチ
世界一のパンの国はどこか? 味で決めるのは難題でも、食べる量なら一目瞭然。国民一人当たりの年間パン消費量が、ギネス世界記録に認定されているトルコ。2000年の記録達成時の消費量は、199.6㎏! 最新の調査でも、2位に倍近くの差をつけてダントツ1位になっている。
現地に詳しい人に聞くと、それも当然との答え。トルコでは朝昼晩とパンなしの食事は、まず考えられない。おやつにパンもしょっちゅう。街には、多種多様なパンを売る屋台がそこかしこにあり、時間帯を問わずにぎわっている。
伝統的なピタパンから胡麻パンのシミット、ピザのようなピデ……。他国のパンと共通項を持つものも複数あり、パンだけでアジア・ヨーロッパにまたがる帝国としての歴史が偲ばれる。そんなトルコを代表するパン料理が「ドネルケバブ」。パン大国の“ザ・ベスト”サンドイッチだ。
炙り焼きにした肉をそぎ落とし、ピタパンに挟んだトルコ発・世界的ストリートフード。実は、具は肉のみぐらいに素朴だったものがドイツに渡り、各種の野菜やソースが加えられ、洗練されたのだとか。
その説を信じれば、今のトルコのドネルケバブは逆輸入版。だが、この国で味わうおいしさはたとえようがない。自給率100%以上を誇る恵み多き土地柄。大地に育まれた風味豊かなパンと肉や野菜が、口の中に幸福を生む。人と関わるのが大好きなトルコ人。店員と客、または客同士、美味を挟んだ軽い言葉のやり取りも食の楽しみを倍増させる。世界三大料理の一つとして名を馳せるトルコ料理だが、日常的な食空間からも豊かさは十分伝わってくる。
さて、早朝から開店するパン屋台。現在もマスクや手袋をして営業中だ。言葉のやり取りは減ったが、変わらぬおいしさに心は温もる。トルコパンの総称「エキメッキ」のもう一つの意味は“生活の糧”。日々を生きる力を与えてくれる心の糧でもある。