ロシア中央部・ノヴォシビルス。“新しいシベリアの街”を意味するここは、モスクワ、サンクトペテルブルクに次ぐ商業都市だ。シベリアの交通の要所として大いに発展を遂げながら、同時にバレエや音楽、絵画といった芸術文化も大切に育んできた。二十世紀初頭に建てられたクラシカルな建物と、近代的なビルが立ち並ぶ大通りは博物館や美術館が点在し、多くの人で賑わいを見せる。新旧が美しく調和した街並みは、歩いているだけでも実に楽しいものだ。
この地の夏は強烈な日差しが降り注ぎ、ときに40度を超える場合もあるという。暑さで火照った体を冷やすには「クヴァース」と呼ばれるライ麦の発泡性飲料が手放せない。独特の酸味と甘味、少量のアルコール分……たとえるならば、“微炭酸の薄口ビール”といったところか。家庭では黒パンを発酵させてつくったり、街中ではクヴァースを積んだタンクローリーが至る所に見られるほどの人気ぶり。さっぱりとした飲み心地がいつしかクセになる、ロシアの夏の風物詩だ。