南アジア・バングラデシュ。“ベンガル人の国”という意味をもつここは、国土の大部分がインド亜大陸のベンガル湾沿いに形成された世界最大のデルタ地帯。かつて黄金のベンガルと名を馳せた場所だ。
首都ダッカは、人と人力車、車が行き交う“喧騒と混沌の大都会”。それもそのはず、国土の大きさから見れば、世界でも有数の人口密度が高い国。どこを歩いても人、人、人……なのである。そんな街の熱気にいつしか慣れた頃、道路脇を見渡せば、所狭しと並ぶ売店や屋台が目に留まる。店先には多くの老若男女が集い、食事や“ナスタ(軽食)”を楽しむ姿が見受けられる。
この地の食は実に豊かだ。たとえばカレーには、ヨーグルトやマスタードなどさまざまな味があり、具材も大根や川魚、マンゴーと多種多彩。野菜の煮物や炒め物、揚げ物といったシンプルな料理も豊富で、スパイスはほどほどに、素材の風味を生かした優しい味わいが特徴だ。
数あるメニューの中で、ちょっと小腹が空いたとき、頬張りたくなる名物ナスタがあるという。黄金色にぷっくり膨らんだ姿形が愛らしい揚げパン「ルチ」を使った「ルチサンド」である。