カリブ最南端に位置する自然豊かな常夏の国、トリニダード・トバゴ。首都ポート・オブ・スペインは、リオのカーニバル(ブラジル)、ヴェネツィアのカーニバル(イタリア)とともに世界三大カーニバルに名を挙げられるトリニダードカーニバルの舞台として有名だ。街の至る所でカリプソと呼ばれる民衆音楽に、スチールパンの心地よい音色が響く。耳にすれば「どこかで聞いたことがある」と、懐かしさを感じずにはいられない。
そもそもスチールパンは、輸送用のドラム缶の二次利用から生まれた素朴な楽器。当地ではクラシックに至るまで、あらゆる音楽ジャンルに親しまれているが、やはりレゲエにも影響を与えたカリプソが一番似合う。2拍子のリズムにユーモアをからめつつ、社会への鋭い批判を込めた歌詞。平和共存を志向する思いがひしひしと伝わってくる。
古くから英国の植民地でありながら、多様な人種や部族の影響が混じり合い、独自の文化を形成してきた。その一つが食文化で、労働力として移住してきたインド人の影響が今も色濃く残っている。たとえばカリビアン風に発達を遂げたカレーメニュー。軽食の代表格は、クレープのように薄く焼いた小麦粉の生地でカレーを包んだ「ロティ」。そしてそのロティと人気を二分するのが、カレー味のサンドイッチ「ダブルス」だ。
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