1. 食品衛生法で定められた臭素酸カリウムの使用基準等と使用製品について

■ 臭素酸カリウムの使用基準

臭素酸カリウムは、パン(小麦粉を原料として使用するものに限る。)以外の食品に使用してはならない。臭素酸カリウムの使用量は、臭素酸として、小麦粉1kgにつき0.030g以下でなければならない。また、使用した臭素酸カリウムについては、最終食品の完成前に分解し、又は除去しなければならない。 〔食品衛生法・使用基準〕

 食品添加物は、食品衛生法により使用対象食品や使用量等に関する使用基準が定められています。
 臭素酸カリウムは食品衛生法でパンの製造のみに小麦粉改良剤として使用が認められている食品添加物です。臭素酸カリウムの使用量は臭素酸として小麦粉1kgにつき0.030g以下(30ppm以下)と定められています。これは、臭素酸カリウムの使用量としては小麦粉1kgにつき0.039g以下(39ppm以下)に当ります。また、使用した臭素酸カリウムについては、最終食品の完成前に分解または除去しなければならないとされており、製品中に残存しないことで使用が認められています。

■ 残存分析法

 厚生労働省は、製品中に残存しないことを確認する分析法として、検出限界0.5ppbという高精度の分析法(改良ポストカラムHPLC法)を公定法として定めています。
 ppbは、10億分の1を表す単位です。0.5ppbを距離で表すと東京・福岡間1,000キロメートルの距離の0.5ミリメートルに相当します。また、0.5ppbを%で表すと0.00000005%となります。

■ 臭素酸カリウムの表示

 角型食パンで使用する小麦粉改良剤の臭素酸カリウムは、最終食品の完成前に分解され製品中には残存しないため、食品表示法(食品表示基準)に定められた加工助剤に当り、表示は免除されます。そのため商品パッケージの原材料名欄には表示していません。

■ 臭素酸カリウム使用製品

当社では角型食パンの品質改良のため、以下の製品に小麦粉改良剤の臭素酸カリウムを使用します。

  • (1)「 超芳醇」、「減塩食パン超芳醇(塩分50%カット)」、「食物繊維食パン超芳醇」
  • (2)「モーニングスター」
  • (3)ランチパック用食パン(全粒粉食パンは除く)*北海道地区は除く
  • (4)ヤマザキブランドのサンドイッチ製品に使用される角型食パン(全粒粉食パンは除く)*北海道地区は除く
  • (5)「もっちり食パン 湯捏仕込み」

2. 臭素酸残存試験結果について

 当社は国内外の研究機関との永年に亘る共同研究により、高精度の残存分析方法を確立し、残存のメカニズムについて研究した結果、角型食パンでは臭素酸カリウムが残存しないことを、科学的根拠をもって確認いたしました。

■ パンの種類および製法の違いによる臭素酸残存への影響

 厚生労働省が定めた、パン中の残存臭素酸測定法である改良ポストカラムHPLC法(検出限界0.5ppb)を用い、パンの種類および製法の違いによる、パン製品中の残存臭素酸量への影響を確認した結果、〔表1〕で示すとおり、製法の違いに関わらず、山型食パンや菓子パン(ロールパン)ではクラスト(パン表皮部)に微量の残存が認められたのに対し、角型食パンでは残存は一切認められませんでした。



表1 パン製品中の残存臭素酸量 (ppb)

角型食パン 山型食パン ロールパン
中種法 検出せず 2.0 21.6
直捏法 検出せず 5.4 67.1
短時間法 検出せず 8.7 23.4

*残存臭素酸測定法 
改良ポストカラムHPLC法(検出限界0.5ppb)

■ 角型食パンで臭素酸の残存が認められなかった理由

 角型食パンには臭素酸の残存が一切認められず、山型食パンでは上部クラスト(パン表皮部)に微量の残存が認められた理由は、次のように考察されます。焼成過程において、角型食パンの生地は焼成蓋で覆われているため、〔図1〕のグラフで示すとおり、焼成初期段階における生地の表面温度は比較的穏やかに上昇します。一方、蓋がない山型食パンの生地はオーブン内で露出されるため、200℃前後の高温に直接晒されることにより生地の表面温度は速やかに上昇します。グルテンタンパク質の変性の目安となる70℃に到達する時間は、山型食パン生地ではオーブン投入後わずか30秒程度であるのに対し、角型食パン生地では約4分を要しました。
 この結果、角型食パンでは、比較的長時間、生地中に水分が保持されると共にグルテンタンパク質の熱変性が抑えられます。この間、保持された水分が臭素酸を分解し、またグルテンタンパク質は臭素酸の分解によって生じる酸素の受け手として機能するため、角型食パンでは臭素酸の分解が促進されます。

図1 食パン焼成工程初期の生地表面温度上昇

■ 中種法・角型食パン製造工程における生地中の臭素酸残存率の変化

 最終製品で臭素酸の残存が見られなかった角型食パンにおける、工程の進行に伴う生地中の臭素酸残存率の変化を観察したところ、〔図2〕のグラフで示すとおり、臭素酸カリウムを溶液化して使用した場合、添加した臭素酸の約9割が既に生地捏上後には分解しており、焼成25分の時点で臭素酸は残存していないことがわかりました。この結果から、角型食パンでは、焼成中に確実に臭素酸カリウムが分解されていることが確認されました。

図2 中種法・角型食パン生地
工程中の臭素酸の消長

※グラフの数値は中種混捏開始時を
100とした時の臭素酸の残存率(%)を示す

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