責任ある原材料調達
原材料調達の考え方
当社は、「最高の品質と最善のサービス(今日到達しうるベストクオリティー・ベストサービス)」を目標としており、その実現のためには、安全でかつ品質に優れた原材料が不可欠であると考えています。すべての原材料について最高の品質を求め、常に厳しい選択を行っており、主原料の小麦粉は、パン用として最適なカナダ産、アメリカ産の小麦を厳選し、その特徴を活かして製粉された、高品質な当社オリジナルの小麦粉を調達しています。
また、当社の社会的使命である、食の安定供給を継続していくためには、安定的な調達活動が重要となります。当社は、原材料メーカーとの協力・信頼関係の構築に努めるとともに、公平・公正な取引を行ってまいります。さらに、最良の原材料とは、品質だけでなくサプライチェーンにおける人権の尊重や環境保全にも配慮された原材料でなければなりません。
当社は、最新の優れた技術、設備を駆使して、お客様に喜ばれる真に価値ある製品を安定的に提供し続けていくために、常に安全で良質な最良の原材料の安定確保に注力していきます。
〔調達方針〕
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- 1. 法令遵守
- 関係各国・地域の法令や社会規範を遵守した調達活動を行います。
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- 2. 品質・安全性の確保
- お客様に高品質で安全・安心な製品を提供するため、品質と安全性を最優先にした調達活動を実施します。
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- 3. 安定調達
- 安定的な調達活動に取り組むため、お取引先との協力・信頼関係を構築します。
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- 4. 公平・公正な取引
- 公平・公正な取引のもと、最良の原材料を適正な価格で調達します。
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- 5. 人権尊重と環境保全
- サプライチェーンにおける人権の尊重(強制労働や児童労働の禁止等)に努めるとともに、環境保全(大気・土壌・河川の汚染防止、森林破壊防止等)に配慮します。
責任ある原材料調達を実現する体制
主食の一部であるパン類や和洋菓子等を安全かつ安定的に供給するためには、調達活動が、最も重要であると考えています。当社の製品群は、小麦粉をはじめ油脂、乳製品などさまざまな原材料を使用しており、当社が責任ある原材料調達を実現するためには、原材料メーカーとの協力・信頼関係の構築が必要不可欠です。阪神・淡路大震災や東日本大震災が発生した際に、当社は、多くの原材料メーカーの協力により、震災直後から被災地に緊急食糧を供給することができました。
調達活動の体制については、本社に購買本部、工場に資材課を設置しています。購買・資材部門では総勢約650名が、日々、原材料調達の業務に従事しています。購買本部は、原材料の製造工程や衛生管理状況および品質を確認し、工場の資材課では日々納品される原材料の品質(外装、納品温度、使用期限や数量など)について確認しています。
新規サプライヤーや新たな産地、異なる工程で製造される原材料を採用する際は可能な限り現地に赴き、衛生状況、品質、規格の確認を行っています。さらに、労働環境や地球環境への配慮の状況を確認するよう努めています。
原材料安定確保のための取り組み
当社は、日本における主食の安定供給の一翼を担えるよう、原材料の安定確保に努めています。台風や豪雨、大雪、地震などの影響を軽減させるため、原材料製造拠点の分散化、物流の見直し、複数社購買などの対策を実施しています。また、さまざまな理由による供給リスク(鳥インフルエンザなど)に備えて、サプライヤーのご協力をいただき、産地の変更や代替可能な原料の検討を常時行っています。
世界各地で異常気象が発生しており、干ばつや洪水などによる収量や品質の低下が、良品質な原材料の安定確保にとっての大きなリスクとなります。地政学的リスクや世界的な感染症の流行などに伴う供給や物流の停滞も懸念されます。こうしたリスクへの対応として、調達国や地域の分散化、新たな産地や供給先の開拓に積極的に取り組んでいます。例えば、レーズンは米国のカリフォルニア産が中心でしたがトルコ産の使用も開始し、バナナはフィリピン産のほかメキシコ産やエクアドル産なども採用しています。
原材料の安全性と品質確保のために
お客様に信頼していただける安全・安心で良品質な製品を提供し続けていくために原材料の安全性と品質管理は最重要課題です。購買本部、食品安全衛生管理本部、生産部門のスタッフが一緒に、小麦やレーズンなど主要な農産物の産地を定期的に訪問し、農薬の管理状況や作柄、品質などの確認を行っています。原材料の加工工場についても農産物の産地訪問と同様に視察を行い、衛生状況、規格などを確認するとともに労働条件や環境への配慮などについても調査を行っています。このような活動を通して、サプライヤーの皆様に当社の求める原材料の安全性と品質基準を理解していただくとともに、信頼関係の維持・構築に努めています。
また、輸入原料については、サプライヤーにおける残留農薬や規格などの検査に加えて、当社の中央研究所で分析検査を実施し、安全性と品質の確認を行っています。

米国産小麦の産地視察(ノースダコタ)
サプライヤーとのエンゲージメントによる環境負荷低減
当社は、製品に使用するフィルム包装やトレーの薄肉化によるCO2削減をはじめ、サプライヤーとのエンゲージメントによる環境負荷の低減に取り組んでいます。
当社のパン製品や和・洋菓子製品はホールセールで販売しており、食品表示法等に基づいた原材料表示、製造者表示などが必要です。また、製品特長を伝えるためのパッケージデザインは重要であり、この印刷に使用するインクは、印刷後の安定性(定着性)が求められるため、石油化学製品を原料とするインクが一般的ですが、当社では、2017年から包材インク原料の一部を植物由来としたインクを採用しています。さらに、2020年からは、使用するすべてのインクを、植物由来の原料を3%もしくは10%配合したインクに変更しました。CO2排出量に換算すると、年間約260トンの削減につながっています。
また、原材料を納品する際に使われる段ボール等の梱包資材を、繰り返し使用できる通い容器にすることで、環境への負荷低減を図っています。通い容器への変更は、パン酵母、油脂、ジャム、包材等で順次実施しています。
さらに、製品に使用する原材料の物流については、従来は原材料メーカー各社が当社の工場にそれぞれ納品していましたが、近年は当社グループの(株)ヤマザキ物流の拠点と物流網を活用して共同配送化を推進しています。原材料メーカーから(株)ヤマザキ物流の営業所または配送センターに原材料を納品いただき、トラックに最大限の原材料を積載して各工場に納品することで、納品車両台数を削減しています。関わる原材料メーカーは146社、取り扱い品目は約5,000アイテムに上ります。これによってCO2排出を抑制しています。

通い容器
原材料の共同配送体制

持続可能なパーム油、カカオ豆調達への取り組み
パンや和洋菓子の製造にはマーガリンやショートニング、フライオイルなどの油脂が不可欠です。これらの油脂に多く使用されているパーム油は、世界的に需要が拡大しています。その需要に対応して、生産地マレーシアやインドネシアでは大規模なプランテーション(栽培地)をつくるために、熱帯雨林の伐採などが行われ、環境破壊や生物多様性の喪失が社会問題となっています。また児童労働などの人権侵害なども問題となっています。当社では地球環境や人権・労働問題に関する基準を定めた持続可能なパーム油調達の認証機関(RSPO)の理念に賛同し、2020年2月に正会員として加入しました。2020年からはマスバランス方式によって認定されたRSPO認証パーム使用油脂の調達も開始しました。今後も、NDPE方針(
No Deforestation、No Peat、No
Exploitation:森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ)を支持し、お取引先などのステークホルダーの協力を得て、パーム原産地の環境と労働者の人権に配慮して生産されたことが確認できるパーム油の調達を拡大していきます。
また、チョコレートの原料であるカカオ豆はカカオ農家の劣悪な労働環境、貧困、児童労働や森林伐採による地球温暖化など、さまざまな社会課題を抱えています。これらの社会課題を解決し持続可能な調達を実現するために、持続的な生産を支援する団体に加盟しているサプライヤーを中心に購入しています。購買部門では海外の産地や現地の工場視察なども実施し、調達先の環境についての情報収集やサプライヤーとの意見交換にも努め、安全・安心で持続可能な原材料調達を推進しています。

マレーシア産パーム油の産地視察

カカオ畑の様子
マレーシアのパームヤシ農園を訪問視察
2024年6月、本社購買部門のスタッフが、サプライヤーの協力のもと、マレーシアのパームヤシ農園や搾油工場を視察しました。
当社は、パーム油を直接購入していないものの、原料として購入するマーガリン、ホイップクリーム、ドーナツオイル、チョコレートなどにパーム油が使われています。これらの原料は、当社製品を製造するうえで欠かすことのできない重要な原料で、それらを複数のサプライヤーから調達していますが、いずれのサプライヤーもRSPOに加盟しています。特に取引量の多いサプライヤーに対しては、生産国における一次精製工場、搾油工場、そして農園までのトレーサビリティが可能となるよう依頼しています。
今回の現地視察では、サプライヤーの現地法人が、RSPO認証を取得していない小規模パーム農家に対して、森林伐採の禁止や適正な労働環境確保など、RSPO認証の取得に向けた教育や資金援助に取り組んでいることを確認しました。今後も調達先の環境や人権についての情報収集に努め、安全・安心かつ持続可能な調達に取り組んでいきます。
国産小麦の利用拡大に向けた取り組み
当社では、主原料の小麦粉については、製パン適性に優れたカナダ産や米国産の小麦を多く使用しています。一方で、原材料の安定調達を図る取り組みの一つとして、国小麦の製パン性の向上に関する研究を継続的に行うとともに、国産小麦を使用した食パン等の新製品開発に取り組んでいます。
国産小麦にはさまざまな品種があります。小麦粉に加工し、パンなどの各種製品を製造した際に、外国産小麦に比べて、食感はもちもち感やしっとり感が強くなり、風味は味や香りが強くなるといった特長があります。
当社グループでは、以前から一部の製品にさまざまな国産小麦粉を一定割合使用して食感や風味に特長を付与し、パン類、和菓子類、洋菓子類、麺類、菓子類などを製造、販売してきました。近年、国産小麦の利用をさらに拡大するため、使用量の大幅な増加が見込める食パン製品での使用について検討を進めています。2020年からは、北海道立総合研究機構北見農業試験場と北海道の農家が連携してつくり上げた当社専用粉である新規国産小麦粉「太陽(ひ)のちから」を含む国産小麦粉100%使用の食パンを製造・販売しています。しかしながら、原麦の農業特性にやや課題があること、また、当社での食パン製造時のライン適性の問題で使用割合が限られることから、現在、北見農業試験場と共同で、食パン製品での本格的な実用化が可能な、農業特性が良好で安定的な生産が期待できる後継品種を見出すための研究を進めています。また、一方で、既存の国産小麦粉を使用して、配合や工程の工夫により、求められる特長を付与した食パン製品の開発についてもあわせて検討を進めています。
当社は、食パン製品に使用可能な新規品種の探索と既存品種の活用の両面から積極的に研究を進め、引き続き国産小麦の利用拡大に取り組んでいきたいと考えています。

健康や環境に配慮したプラントベースフードへの取り組み
プラントベースフードは植物由来の原料を使用した食品であり、近年その市場は、健康志向や環境配慮の社会背景の中で急速に拡大しています。当社では、栄養価が高く環境負荷が低い「大豆」に着目し、植物由来の大豆ミートを使用した「ランチパックソイメンチカツ」「同ソイミートソース」を2023年に発売しました。大豆ミートを使用することで、肉などの動物性食品に偏った食事を見直したいという健康志向に応えるとともに、世界的な人口増加やタンパク質需要の拡大に伴うタンパク質不足への対応や、畜産と比べてCO2排出削減にも貢献できるといった環境面にも配慮し、人と環境にやさしい製品として開発しました。

(左)ランチパックソイメンチカツ
(右)ランチパックソイミートソース