世界有数の自然大国ベネズエラ。アンデスやギアナ高地の印象が強いが、カリブ海に面する北部も格別で、陽光降り注ぐ楽園の景色が連なる。近代都市と化した首都カラカスにもその片鱗は垣間見え、南国風の花や果実、群れ飛ぶ野鳥が灰色のビルの合間から豊かな色彩を覗かせる。
多彩なのは自然だけではない。コロンブスによる発見以降、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、近隣諸国からの人の流入はこの街の文化や人種構成を複雑にした。食文化もしかり。ここに立つレストランの国籍の多様さは南米随一。一方、家庭料理は古くからのインディヘナ伝来の味わいに各国の影響が溶け合っている。
小麦パン、とうもろこしのパン、米……。主食と呼べるものからして豊富。その中で国民食と呼ばれるほど愛されているのが「アレパ」である。とうもろこし粉にバターと水または牛乳を混ぜて練り、フライパンで焼いたもの。洋風おやきのようでもあり、コーンとバターの香り豊か。素朴さとリッチな味わいが同居する不思議なおいしさのパンだ。
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