気候変動への対応

TCFD提言に基づく情報開示

 当社は、金融安定理事会により設置されたTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同するとともに、今後、気候変動が事業に与えるリスクと機会について検討し、TCFDの枠組みに基づいた情報開示を進めていきます。


山崎製パン全体のCO2排出量実績

 当社は、気候変動の緩和に貢献するため、工場、物流、小売店舗のそれぞれにおいて、CO2排出量削減対策に積極的に取り組んでいます。2022年のScope1・2のCO2排出量は486千トン(前年比98.3%、2013年比84.9%)、売上高10億円当たりのCO2排出量は632トン(前年比94.8%、2013年比72.9%)となりました。

CO2排出量とCO2排出量原単位の推移

CO2排出量とCO2排出量原単位の推移

※表の記載金額は、百万円未満の端数を四捨五入して表示しています。各数値の合計が合計額と一致しない場合があります。

工場・事業所における取り組み

 当社は、全社的なエネルギー管理体制を構築し、エネルギー効率の改善を推進しています。各工場・事業所においては、エネルギーの効率的な利用を推進するため、コージェネレーションシステムの導入をはじめLED照明等の省エネルギー機器への入れ替えに取り組むとともに、太陽光等の再生可能エネルギーの活用に向けての検証を進めています。また、これまでにCO2排出量の少ない燃料への転換等、大規模な設備投資を行ってきました。2022年の工場・事業所におけるCO2排出量は、393千トン(前年比98.1%、2013年比82.9%)でした。生産高10億円当たりのCO2排出量は、590トン(前年比94.8%、2013年比74.0%)でした。


  • エネルギー使用量とエネルギー原単位の推移

    エネルギー使用量とエネルギー原単位の推移
  • 工場・事業所によるCO2排出量とCO2排出量原単位の推移

    工場・事業所によるCO2排出量とCO2排出量原単位の推移

コージェネレーションシステムの導入

 当社は、都市ガスを利用したコージェネレーションシステムを9工場に導入しています。コージェネレーションシステムは、発電した電気と、発電時に発生した熱の両方のエネルギーを使用することにより高いエネルギー効率で運用することができます。熱エネルギーは、生産工程で使用する蒸気や温水に利用されています。省エネ効果が大きく、2022年のCO2排出量を年間7,200トン削減しました。これは、工場におけるCO2排出量の約2.5%に相当します。
 また、当社のコージェネレーション設備は、停電時においても起動できるよう、バッテリー装置等を付加しており、都市ガスの供給があれば発電することが可能です。自然災害等により大規模停電が発生した際に、工場の稼働を継続させることに役立ちます。

コージェネレーション設備

コージェネレーション設備

最新の省エネルギー機器の導入

LED照明の導入

 工場の生産ラインや事務所の照明は、LED化を進めています。2022年は、8,500台の照明をLEDに交換し、CO2排出量を年間517トン削減しました。これまでのLED化の進捗率は93.6%です。

熱回収式電動コンプレッサー

 埼玉第一工場に導入した熱回収式電動コンプレッサーは、圧縮空気をつくる過程で発生する熱を活用してボイラーの給水を加熱する仕組みです。これにより、CO2排出量を年間約48トン削減しました。

温水式洗浄機の排熱回収

 洗浄機に熱交換器を設置することにより、排水された温水から熱を回収して洗浄機の給水を加温することで、エネルギー使用量とCO2排出量を削減しています。京都工場には、天板(パンなどをオーブンで焼く時にのせる鉄板)洗浄機、神戸工場には番重洗浄機に、それぞれ導入しています。

LED照明

LED照明

再生可能エネルギーの活用

 太陽光などの再生可能エネルギーについて、工場での活用に向けた実効性の検証を進めています。これまでに4工場・事業所(武蔵野工場、横浜第一工場、熊本工場、神戸冷生地事業所)に、小規模の太陽光発電設備を導入しており、2022年の発電量は、年間43,000kWhでした。2023年3月には、これまでよりも規模の大きい、カーポート方式の太陽光発電設備(出力160kW)を古河工場に導入しました。

カーポート方式の太陽光発電設備

カーポート方式の太陽光発電設備

天然ガスへの燃料転換

 当社では、2008年から、都市ガスのパイプライン未整備地域の工場において、重油やLPGからCO2排出の少ない天然ガス(都市ガス)への燃料転換を進めてきました。これまでに4工場・事業所(岡山工場、広島工場、香川製餡事業所、熊本工場)にLNGサテライト設備を設置し、天然ガスへの燃料転換を実施しました。また、2020年には仙台工場で工場までのパイプラインを敷くことにより、都市ガスへの燃料転換を行い、さらに2022年には十和田工場も同様の方法で燃料転換を行いました。

LNGサテライト設備

LNGサテライト設備

フロン使用機器の管理

 フロンは無色、無臭、不燃性で冷媒として優れた特性がありますが、地球温暖化係数がCO2の数千倍の影響がある物質です。当社では、工場の空調設備や冷却機器をはじめ、配送トラック荷室の冷凍機や店舗のショーケース、自動販売機などで、フロンを冷媒として使用しています。当社は、フロン排出抑制法で定められている機器の点検を実施するとともに、修理時や廃棄時の管理ルールを定め、フロン漏えいの抑制に努めています。
 また、冷凍冷蔵機器など冷媒使用設備の新規導入や更新の際には、地球温暖化係数の低い冷媒を選択し、CO2やアンモニアなどの環境負荷の低い自然冷媒についても積極的に採用していきます。

フリーザ用大型冷凍機

フリーザ用大型冷凍機

音響カメラを使用したエアー漏れ点検

 当社の工場では、例えばパンの焼成時に使用する天板を移動させるためなどの機械のエアーシリンダーや、清掃時に使用するエアーガンにエアーを供給するために、コンプレッサーから配管やチューブを通して、各生産ラインにエアーを送っています。各工場では、エネルギーの効率的な使用を図るため、本社と連携し音響カメラを使用したエアー漏れ点検を行っています。この点検は、工場内の設備の中でエアー漏れ箇所から発する超音波を特殊なカメラで検知し、漏れ箇所を特定します。こうした点検方法を導入してから、人の五感による方法の通常の点検では発見が困難な箇所のエアー漏れも補修することが可能となりました。エアー漏れが改善されるとコンプレッサーの負荷が軽減されるため、コンプレッサーを動かす電力の削減につながります。

音響カメラを使用したエアー漏れ点検の様子

音響カメラを使用したエアー漏れ点検の様子


物流における取り組み

 当社は、毎日、新鮮なおいしさをお客様にお届けするために、工場から販売店様へ直接配送する自社物流システムを採用しています。この物流システムにデジタル技術を積極的に導入し、GPSやドライブレコーダーと連動した配送管理による配送効率の向上とエコドライブ推進によるCO2排出量の削減を図っています。また、「デイリーヤマザキ」の物流を自社物流システムに取り込み、配送の合理化を図るとともに、原材料調達における共同配送に取り組み、環境負荷の低減を図っています。
 2022年度の物流によるCO2排出量は59千トンで前年比98.9%でした。売上高10億円あたりの排出量は77トンと前年に対して4.6%の削減となりました。

物流によるCO2排出量とCO2排出量原単位の推移(Scope1)

物流によるCO2排出量とCO2排出量原単位の推移(Scope1)

エコドライブの推進

 2000年6月以降に配送部門を持つ全国20工場でエコドライブを実施する体制を整備し、2020年にすべての配送拠点に「車載端末」を導入しました。車両位置や運転状況をリアルタイムで把握できるようになり、配送中の急発進や急ブレーキの抑制を進めるなど、エコドライブを推進しています。当社では全国で1日当たり約2,700台のトラックが走っており、1日の走行距離は約324,000km(地球を約8.1周)です。軽油の使用量は年間約1,040kℓ削減され、CO2排出量は年間約2,700トン削減されています。

パントラック 車載端末で走行状況をリアルタイムで把握

車載端末で走行状況をリアルタイムで把握

運行管理システムによる走行距離の最適化

 当社では「配送コース最適化システム」により、最適な配送ルートの構築を進めています。また、物量に応じて配送回数の集約(2回から1回へ)を進め、配送コースは4年前と比べて85コースを集約しました。また店舗への到着時間や荷室の温度のほか、平均速度や急激な速度変化の回数などを車載端末に記録し、エコドライブに役立てています。

運行管理システムの仕組み

運行管理システムの仕組み

「デイリーヤマザキ」の物流自社化によるCO2排出量の削減

 「デイリーヤマザキ」の店舗への納品は、外部の配送業者のトラックで届けられていましたが、2015年からチルド商品(牛乳・サンドイッチ・弁当)や冷凍食品(アイスなど)、2016年からドライ商品(食品・菓子・雑貨)の一部をパンと一緒の自社便での配送を開始しています。この取り組みによって、店舗に納品するトラックの台数が削減され、CO2排出量削減につながっています。


「デイリーヤマザキ」の自社物流体制

「デイリーヤマザキ」の自社物流体制 「デイリーヤマザキ」の自社物流体制

原材料の共同配送によるCO2排出量の削減

 製品に使用する原材料の物流については、従来は原材料メーカー各社が当社の工場に納品していましたが、近年は当社グループの(株)ヤマザキ物流の拠点と物流網を活用した共同配送化を推進しています。原材料メーカーから(株)ヤマザキ物流の営業所に集まるさまざまな原材料をトラックに最大限に積載することで、工場への納品車両台数を削減しています。関わる原材料メーカーは121社、取り扱い品目は約4,300アイテムに上ります。これによってCO2排出を抑制しています。

原材料の共同配送体制

原材料の共同配送体制

電気トラック(EV)の共同実験

 2019年9月からCO2排出量の削減や騒音防止、大気汚染の防止に効果のあるEVトラックを導入して配送業務の実証実験を実施しました(2023年3月で実証実験終了)。いすゞ自動車様製のエルフEVトラックにチルド室を架装し、横浜第二工場において1日2便のルート配送を行いました。ディーゼルトラックと遜色ない使い勝手やCO2の削減効果を確認できており、今後導入に向けた検討を進めていきます。

モーダルシフト(鉄道輸送)の活用

 一般的に鉄道輸送のCO2排出量はトラック輸送の12分の1といわれています。松戸第一工場ではCO2排出量の少ない貨物列車を活用した拠点間物流の運用を行っています。週3回の頻度でロングライフの製品を鉄道コンテナに積み込み南千住駅にて積み替え、札幌駅を経由して札幌工場に輸送しています。今後も引き続きCO2排出量の少ない輸送手段として、貨物列車の活用を検討していきます。


小売店舗における省エネの取り組み


 「デイリーヤマザキ」では地球温暖化防止のため、省エネ機器の導入と店舗運営の工夫によって、エネルギー使用の削減に取り組んでいます。店舗では日々の店舗運営の中で、機器の温度管理やフィルター清掃などの省エネに取り組み、CO2排出の削減に取り組んでいます。また店舗は自店の電気・ガスの使用量等の情報を本部に提供し、本部はエネルギー使用実績や使用状況をデータ化し、店舗に毎月フィードバックすることで、本部と店舗が協力してエネルギー使用の削減に取り組んでいます。

「デイリーヤマザキ」店舗からのCO2排出量とCO2排出量原単位の推移

「デイリーヤマザキ」店舗からのCO2排出量とCO2排出量原単位の推移
  • 小売店舗における省エネの取り組み
  • 省エネの取り組み

照明機器のLED化

 照明は店舗の電力使用量の約30%を占めています。使用電力を少しでも減らす取り組みの一つが蛍光灯と比較して消費電力の少ないLED照明の使用です。「デイリーヤマザキ」ではLED照明を店内照明、看板照明およびパン棚照明に使用しています。また看板の照明には点灯・消灯タイマーを設置しており、電力使用量の削減に効果を上げています。

冷凍冷蔵機器の省エネ化

 空調機器と冷凍冷蔵機器には高効率なインバータ仕様の機器を設置してエネルギー使用の削減を図っています。一部の店舗では冷媒にCO2を使ったノンフロンの冷蔵ショーケース、冷蔵ウォークインケース、冷凍リーチインを設置して省エネ化を進めるとともに、地球温暖化に影響が大きいフロンの漏えい抑制にもつなげています。ノンフロン機器の導入は今後も拡大していく計画です。

レジ袋の有料化とバイオマスプラスチック化

 プラスチックは便利な素材ですが、プラスチックごみは海洋を汚染するなど大きな影響を与えています。石油由来のプラスチックの使用を削減するため、2020年7月からレジ袋を有料化し、バイオマス由来の原料を30%配合したレジ袋に切り替え、石油資源の節約とCO2の削減に貢献しています。レジ袋の有料化とあわせてお客様への声かけや店頭にご協力を呼びかけるポスターを掲出するなどの啓発活動を推進しています。2022年度のレジ袋使用量は5,900万枚で、レジ袋有料化前と比較すると73%削減されています。レジ袋を受け取らないお客様の割合(レジ袋辞退率)は77%となっています。

レジ袋使用枚数とレジ袋辞退率の推移

レジ袋使用枚数とレジ袋辞退率の推移

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