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ヤマザキ 世界の朝食
一日の元気は、朝食をしっかり食べることから始まります。
世界各地のバラエティ豊かな朝食---
また、幸せの香り漂うパン料理などを紹介していきます。
月刊dancyu[ダンチュウ]
月刊dancyu[ダンチュウ]2012年8月号
編集タイアップ企画より
今月の1皿~「アブグーシュト」「バルバリ」
イラン・イスラム共和国 テヘラン 辛くないカレー?イランのスパイス煮込み
玉ねぎ、トマト、じゃがいも、ひよこ豆、ライム、羊肉を数種のスパイスと煮込むイランの伝統料理「アブグーシュト」(アブ=水、グーシュト=肉)。同じ料理でも、小さな壺(写真左)でつくれば「ディジゲリ」(土器製壺の意)と名前が変わる。ナンとともに、生の玉ねぎやミント、ピクルスなどをつまみつつ食べる。写真奥は、発酵種を加えて焼く「バルバリ」。皮はカリッ、中はしっとりのおいしいナンだ。
 近年、テヘランに帰郷した人々は、久々に見る故郷の変化に驚きを隠さない。近代化の波は急速で、チャイや水タバコを楽しむ古きよきチャイハネ(茶館)さえそれを逃れていない。そんな彼らをほっとさせるのは、昔ながらの変わらぬ「あの味」だ。
 あの味とはチャイハネ名物「アブグーシュト」。野菜、豆、羊肉をスパイスと煮込んだシチューで、イランの伝統料理である。一口食べた印象は辛くないトマトカレー。だが、その一言では片付けられない。まろやかになるまで煮込んだ素材とスパイスの絶妙な調和、そこから引き出される滋味──。食べるほどに味わい深く、愛されてきた長い年月の重みさえ舌を通じて伝わってくる。
 この料理、食べ方が面白い。まずスープだけ別皿に取り、ちぎったパンを浸して食べる。次に残った具をマッシュし、パンにのせてパクリ。一皿で二度おいしい。パンをちぎり、分け合うスタイルが大人数での食事を好むイラン人に適っている。

 さてイランでパンといえば、やはりナン。イランはパン小麦の故郷の一つで、ナンの先祖に当たる平焼きパンも古代メソポタミアからペルシアで誕生したとされる。民族や地域ごとに個性豊かなナンがあり、それらが集まる首都テヘランは、さながらナンの博物館だ。代表的なのは上写真のバルバリや、インドナンの祖先を思わせるナンニマシュハディ、トルティーヤに似たラバシ、生地にオリーブオイルを混ぜて大窯で焼くサンギャギなどで、それぞれ専門店で売られている。実はフランスパンも人気なのだが、こちらは〝ナンのスーパー〟と呼ばれる多種のパンを置く高級店の品物で、休日など特別な日の朝に食べられるようだ。
 朝といえば、代表的な朝食にレンズ豆の煮込み「アダシ」がある。バザールでもおなじみの一品で、早朝、買い物前に専門店で熱々を楽しむ人の輪をよく見かける。顔見知りに会えば「一緒に食べよう」と、食卓が膨らんでいくのもテヘランらしい光景だ。世界有数の古い歴史をもつ国にも訪れる変化の中で、大切なものはちゃんと守られている。そんな喜びさえ感じるテヘランの朝である。

朝のテーブルから
家庭やバザールの朝食でおなじみのレンズ豆の煮込み「アダシ」。健康は食事から──。医食同源と同様の食文化をもつイランでは、豆は体を温める効果があるとされる。合わせるパンはナンが多いが、実はフランスパンも人気。もちろん、熱いチャイも朝の食卓に欠かせない。 アダシ
ヤマザキ
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