インドは、北から南へ向かうのがいい。旅慣れた多くの人に聞く話だが、なるほど南部の緑濃い風景は北部よりのんびりとして、人々も温和。青空を背景に建つヒンドゥー寺院を眺めていると、なんだかこの国の故郷にたどり着いた気さえする。
そして南インドは、あっさりして体にやさしいベジタリアン料理が発達した地。季節の野菜をたっぷり使い、それぞれのパワーと滋味を導き出す調理法は、日本人にもしみじみおいしく感じられる。
「パオバジ」は、そんな南インドで愛されるベジタリアンカレーだ。じゃがいもや豆、トマトなどを複数のスパイスと煮込んだ赤いカレー。もとは西インド・ムンバイ発祥の料理らしいが、ユニークなのはパン。必ず小さな山型パンやイングリッシュマフィン風のパンがついてくる。チャパティなど無発酵パンが主流のインドで、パオバジはイギリスパンとの組み合わせで成り立つ一皿なのだ。
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