日本の寿司を思わせる精緻なものから、大きなパンを覆うほど具がのったものまで。コペンハーゲンのレストランが英国のグルメ誌で〝世界一〟に選ばれたり、世界最先端料理のアイデアや技法を取り入れた〝新北欧料理〟が注目されるなど変化が著しいデンマーク料理だが、スモーブローの領域にもその潮流は届いている。 もともと食事を重んじる国民性。一日一度は家族揃って食卓に着くのが常で、つくる時間も大切に、調理は夫婦共同という家庭も多い。デンマークには人と人の絆から生まれる温かみを指す〝ヒュッゲ〟という言葉があるが、ヒュッゲを育む場の一つが豊かな食卓だと考えられている。
焼いた肉、ゆでたじゃがいも、チーズ、魚の燻製や野菜の酢漬けなど、家の料理はレストランのそれよりもちろんずっと質素でシンプル。だが、この土地で昔から愛されてきたものを愉しんで食べようとの思いは、両者に貫かれている。
さてデンマークで変わらぬものと言えば、朝のパンの香りだ。ほとんどの店が休業日でもパン屋だけは営業。休日は親子連れが多く、どのパンを買おうかと相談する姿が微笑ましい。きっとこの国の誰の記憶にも存在する、ヒュッゲが漂う朝の風景だ。
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