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世界各地のバラエティ豊かな朝食
また、幸せの香り漂うパン料理などを紹介していきます。

ラーオ語でグェンと呼ばれる「ラオカレー」。多彩なスパイスを調合したペーストにココナッツミルク、鶏のだしを合わせてあるためサラサラ。現地の人は、たっぷりの生野菜を好きなだけ加えてスープ感覚で食べるそう。カオプンと呼ばれる麺を浸すのも定番だ。

月刊dancyu[ダンチュウ]
2019年 9月号
編集タイアップ企画より

ラオス人民民主共和国

ハーブと野菜たっぷり!
ラオカレー&サンドイッチ

 地球で最も旅したい場所として、メディアに取り上げられたことも一度や二度ではない。欧米では、すでにバカンスの滞在先として大人気のラオス。国土の大半を占める森林と、メコン川流域に広がるのどかな耕作地帯──。自然のみずみずしい美しさは“メコンの宝石”と讃えられるほどだ。

 王国遺物の仏塔や寺院、コロニアル建築など各時代の面影が残る街も魅力。そしてもう一つ、旅する人を惹きつけるのが食文化の豊かさだ。特に絶賛されるのが野菜やハーブ使い。ラオスには、肥沃な土地が育む野の幸に加え、森の木の実や芽、野草などまで駆使した体に優しい料理が多い。

 「ラオカレー」は、その代表格。ココナッツミルクの甘味やコク、魚醤の旨味、多彩なスパイスをベースとした隣国タイとの類似も多いカレーだが、よりマイルドでハーブたっぷり。さらに、ラオスの食卓に欠かせない生野菜を好きなだけ加えて食べる。さらりとしたスープ状のカレーを通して、何層にも膨らむ青々とした香り、野菜の滋味が体中にしみわたる。

 農村などでは、昼夜だけでなく朝食でも食べられるという。一気に力がみなぎるというより、熱帯の一日、外で働く家族の体をいたわり、支える滋養にあふれたカレー。人と会えば「ご飯は食べた?」と声をかけ、「まだ」と言われれば食事を振る舞うラオスの人々。思いやりと助け合いの精神に満ちた国民性は、家庭に代々伝わる味にもしみ出ているようだ。

 一方、街で近年は観光客にもおなじみの朝食が屋台料理。特にフランス統治の置き土産とされるバゲットサンドイッチの「カオ・チー」は、ラオス名物。穏やかな笑顔を湛えた店の人が差し出すパンを頬張れば、パクチーをはじめとする地場のハーブや野菜、肉の味が、ピリリと辛いスパイスのアクセントとともに広がる。どこからか聞こえるのは托鉢僧の澄み渡る読経の声。こんな朝もまた、この国の輝く宝石である。