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世界各地のバラエティ豊かな朝食
また、幸せの香り漂うパン料理などを紹介していきます。

日々、新スタイルが誕生している「セビーチェ・ニッケイ」。この一皿ではパン粉をまぶし、さっと揚げた鰹とペルー産醤油を加えたマリネ液で〆たイカが主役。アンデス産とうもろこしのチョクロ、紫玉ねぎなどを添え、生クリームや唐辛子などを合わせたソースをかけて。

月刊dancyu[ダンチュウ]
2020年 1月号
編集タイアップ企画より

ペルー共和国

和食の新天地。
ニッケイ料理と朝サンド

 南米・ペルーで今、熱い視線を浴びる料理がある。ニッケイ料理。文字通り“日系”なのだが、海外で流行りの日本風を取り入れたアレンジ料理とは成り立ちから違う。

 たとえばSUSHI。基本は江戸前鮨を踏襲しつつ、タネにはペルーの食材やソース、伝統料理まで盛り込まれている。ペルー料理を土台とし、和のエッセンスが自然になじんだものもある。ひと言で言えば、ペルーと日本の食文化の奥行きを伴った融合。世界の有名シェフも注目するほど、高いレベルの料理として成立している。

 代表格が「セビーチェ・ニッケイ」。ペルーの国民的料理、セビーチェのニッケイスタイルだ。オリジナルは柑橘や唐辛子、にんにく、コリアンダーなどでマリネした魚介類に、とうもろこしやさつまいもなどアンデス原産の野菜をちりばめた一皿で“食材の宝庫”ペルー料理の象徴的存在。ニッケイ版は、通常は小さめに刻む魚介類を刺身のようにスライスしたり、より生に近い状態で使ったり、醤油など日本の調味料を忍ばせたり……。むろん、日本人にはなじみやすい味。だがそれは、もはや私たちの知る和食でなく、遠い異国の味わいだ。

 もとは移民として日本から移り住んだ人々が、故国の味で家族や仲間を励まそうと腕を振るった家庭料理。この地に根づいた二世、三世が、それをレストラン料理へと昇華させた。日系に限らず、各国からの移民の味が食文化の裾野を広げたのがペルー料理。そして今、ペルーは多くのメディアやアワードで美食の国として賞賛され、国中に誇りと希望を与えている。

 そんなペルーの食卓に、欠かせない主食がパン。朝食の定番はサンドイッチで、街のパン屋は朝から買い物客で賑やかだ。多くの店では加工肉なども販売していて、顔見知りも初対面同士でも、パンに挟む具を選びながら会話を楽しむ。ルーツや肌の違いを超えて、この国の活気の中心には常においしい食を楽しむ心が存在している。