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世界各地のバラエティ豊かな朝食
また、幸せの香り漂うパン料理などを紹介していきます。

塩気の強いドイツパン「ブレーツェル」と繊細な風味の「白ソーセージ」、フルーティーな香りと酸味が爽やかな「白ビール」からなるミュンヘンの伝統的朝食。市場や食堂、昼前から開くビアホールなどで食べられる。右奥は、やはりビアホールの定番料理レバーケーゼ。

月刊dancyu[ダンチュウ]
2020年 11月号
編集タイアップ企画より

ドイツ連邦共和国
ミュンヘン

収穫の秋!ビールの国の
パンを楽しむ朝食

 南ドイツ・バイエルン州の州都ミュンヘンには、多くの人が心に描くドイツらしいドイツがある。真っ青な空を背景に広がる中世からの街並み、おいしいパンとビール、それらを愛する誇り高く陽気な人々。そんな街がひときわ華やぐのが秋。今年のオクトーバーフェストは休止となってしまったが、収穫の秋を祝う習慣は健在だ。

 この時季、ビールとともに引く手あまたなのが「ブレーツェル」。独特の形はドイツパンの象徴としてもおなじみで、最高のビールの友。艶やかな濃い焼き色は、生地を強いアルカリ溶液に潜らせてから焼くため。細長い生地を空中で瞬く間に成形する手際も含め、職人技が光るパンでもある。

 パンの種類が多く、地方色豊かなドイツ。ライ麦粉を使わない小麦パンのブレーツェルは、北より南で多く見られる。ミュンヘンには専門店もあり、日々の暮らしに密着したパン。ミュンヘン名物・小麦麦芽入りの「白ビール」と合わせれば、この地の豊かな小麦文化が見えてくる。

 朝食にも人気で、ブレーツェルに白ビール、さらに特産の「白ソーセージ」を加えたセットは、街の伝統的な朝定食。仔牛肉と豚の脂身にハーブなどを混ぜたふわりと軽い食感の白ソーセージは、鮮度が命。まだ冷蔵技術が未熟な19世紀半ば、白ソーセージをおいしいうちに満喫しようと生まれた習慣なのだと言う。

 ミュンヘン発祥とも言われるが、実際は定かでないらしい。しかし、地元の人々はこの朝食に誇りを持っている。愛し、守り継いできたものがある──それこそ彼らの誇りであることを、その美味が物語る。

 さて、朝食を大切にするミュンヘンの人々。忙しい日でも、ハムやチーズを何種類も用意して食卓を飾るのを忘れない。その中心にはいつものパン。手をかけた料理は少ないけれど、どれもが家族の愛するもの。歴史ある教会の鐘が響く中、ドイツらしいドイツの一日が今日も始まる。